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2019年末、『NHK紅白歌合戦』で「AIひばり」が話題となり、「美空ひばり記念館」が売りに出されたという衝撃のニュースもかけめぐった。没後32年経ってもなお、人々の心に生き続ける昭和の歌姫。母の遺したものを守るべく奔走する加藤和也さんの覚悟は(構成=篠藤ゆり 撮影=本社写真部〈特記以外〉)
思い出の品々をどうしても捨てられず
生前おふくろが暮らしていた家を「東京目黒 美空ひばり記念館」として一部公開し始めて丸6年。3月末から約3ヵ月間閉館してリフォームし、記念館の一角にひばりプロダクションを移転させました。それまで別のビルの1フロアを事務所として借りていたので、家賃もバカにならなかった。ランニングコストを考え、記念館と一体化させるべきだと判断しました。
とはいえ、美空ひばり記念館の建物は、私が子どもの頃からおふくろと時間を過ごした思い出の場所。私物もずっと置きっぱなしでしたので、片づけは大変でした。つい1つずつ手にとって見ては、懐かしくて「これもとっておこう」となってしまう。
結局、主に自分のものを捨てて、おふくろの荷物には、一切手をつけませんでした。実はけっこう少女趣味なところがあって、原宿のキデイランドの1階に行ってはファンシーなグッズやぬいぐるみを買ったりしていたんですよ。それもすべて残してあります。
昨年末、美空ひばり記念館が売りに出されているというニュースが広がった時は、驚きましたし、大変でした。なにより長年ファンでいてくださった方々にご心配をかけたことが、心苦しかったですね。
ただ報道そのものについては、「こちらの財布の中身まで気にしていただいて」という感じです(笑)。何を言われようが、やっていることはそれまでと変わりないですし、今のところ、記念館を閉めるつもりもありません。これからは入館料を無料にし、予約なしでも来ていただけるようになります。いつでもおふくろに会いに来てください。
報道では、私の借金のこともいろいろ言われましたが、借金はなにも今に始まったことではないですし(笑)。そもそもの出発点は相続税を払うため、私は若くして借金を背負うことになったのです。その後、借金がゼロになったことは人生で一度もありません。