恋愛感情がわからない私は不幸なのか

「ねぇ、なんで人ってキスするの? ハグはギリわかるよ。触れる表面積を最大化するため、みたいな?」

転職で上京してきた大学からの友人から恋バナをふられ、私は大真面目にこんな言葉を口にした。

「なぜ、唇と唇を合わせる必要があるの?」

もちろんこれには文脈があるのだが、私は、恋がわからない人間である。

(写真提供◎写真AC)

友達は大真面目な質問に大真面目に答えてくれたが、少し照れるような内容だったのでここには書かないでおく。

周囲は、恋で舞い上がり、恋を知って変わり、時に恋に破れて失意の底を経験した。

その度に、いままで近かったはずの友人を、遠くに感じた。 

友達や知人と会うと、必ずと言っていいほど恋の話になる。私は聞き役に徹する。人の話を聞くのは楽しいので、モラハラ彼氏の話を聞けば「酷い!」と全力で非難するし、告白する勇気がないと聞けば応援もする。

しかし不意に、「で、ヒオカはどうなのよ!」と、私のターンが回ってくる。

その時正直に、
「恋愛感情も、触れたいという気持ちもまったくわからない」
というと、必ずと言っていいほど、

「いつかわかるようになるよ」
「そういう時が来るよ」
「経験してないだけだよ」

とニヤニヤしながら言われる。

その言葉に、一点の曇りもないこと、私を思ってのことだということはわかっている。
しかし、その言葉は救いでも何でもない。
なぜ、「今のまま」を肯定してくれないのだろう。
じゃあ、このまま一生恋愛感情がわからなかったら、私は不幸なのか?

まるで、何か欠落しているとでも言われているように感じる。