(写真提供◎ヒオカさん 以下すべて)
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第15回は「恋愛しない自由について」です。

ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』

春ドラマが終わり、夏ドラマが始まる時期になった。

春ドラマで忘れられないのが、『恋なんて、本気でやってどうするの?』だ。

恋愛なんて必要ないと言い切る主人公の女性が恋に溺れていく、みたいな展開の物語。

主人公が彼氏にもらったブレスレットを目の前で地面に叩きつけて壊したり、彼氏が、自分の母親と主人公が揉めた時に彼女に向かって「帰れ」なんて言ってしまったり、彼の母親が包丁を振り回したり。登場人物が極端な言動をとり、はちゃめちゃな展開が多く色んな意味で話題を呼んだ。

特に最終回は、主人公が店に置いてある料理をいきなり食べ始めたり、昼間の公園で彼氏に「大きい声で好きって言って!」と叫んだり、トリッキー過ぎる内容に視聴者から総ツッコミを食らっていた。朝ドラ『ちむどんどん』が、#ちむどんどん反省会というハッシュタグで盛り上がっているように、奇妙きてれつな展開に実況アカが的確に突っ込むまでが様式美と化しており、それはそれで面白かったのだが、笑えないシーンがあった。

最終回でいきなり、主人公の行きつけのネイルサロンのオーナーが、バーで主人公に振られた男性に向かって「自分はアセクシャルだ」と言うシーン。そのオーナーは、主人公に「ずっと早く処女なんて捨ててしまえ、そこら辺の男と寝ろ」みたいなことを言ってしまう「上から目線」キャラだった。それがいきなり、世の中には恋ができない人間がいて、それが私…めちゃくちゃ自己憐憫な感じで言うのだ。
そこに至る伏線も何もなく唐突過ぎて見ながら固まった。