筆者の関容子さん(左)と(撮影:岡本隆史)

私もずいぶん長持ちしてる

それからは三谷幸喜作品への出演が続く。たとえば『社長放浪記』とか。

――ああ、私が70歳のときにやった。あれ、一番受けましたね。演出は三宅裕司で、その演出がまたよくて……各役者にニュートラルな部分を残して、決めこまないんですね。それが実にうまくいきました。

三谷さんに出会う前、東宝に呼ばれて植木等さんの『天保六花撰』とか、浜木綿子さんの『玄丹お加代』とか、八千草薫さんの『土佐堀川』、そして三木のり平さんの『喜劇雪之丞変化』。もうそろそろこのあたりで終わりかな、と思ってたら三谷さんとの出会いがあって、ずいぶん私も長持ちしてるんですよね。

 

伊東さんの長持ちの秘訣は足腰を鍛えることと記憶力の鍛錬にある。そのためのウォーキングと暗記。百人一首や江戸時代の国の名前、アメリカの州の名前、何と円周率は一千桁とか!

――まあ、言ってみれば馬鹿ですよ(笑)。ウォーキングは一時間半、休憩付きで。毎日、と自分に課しちゃうとやらなくなるから、行きたいときに行く。記憶のほうは脳細胞を衰えさせないため。しょっちゅうブツブツ言ってます。

これから何か舞台の予定があったらお聞かせください。

――うーん、これ初めて言うんですけど、来年7月、私にとって最初の三谷作品『その場しのぎの男たち』の伊藤博文役をやってくれないか、と言われて、これ猛烈に嬉しかったんで、「やります」って言ってしまいました。新宿の紀伊國屋サザンシアターです。来年は私ももう八十半ばですし、厳しく演出してくれ、ってことは言っておきましたけど。まあ観に来てください。