母が出した大きな大きなボロ

本当に華やかなお母様方が集まる日で、付属の幼稚園から上がってきた子のお母様は特に美しく、鮮やかな色のパンツルックや総レースのワンピース、なかにはサングラスをしてくる方もいらして、教室の後ろを振り返り、その一団を見るのが楽しみなくらいでした。

その中で、私の母は「キレイ」と評判でした。「ヤマ(私のこと)のママって、キレイだよね。ヤマに全然似てないよね」とクラスの女子からズバリ言われることも。私は父親似であり、肥満児で、容姿を褒められるようなことは皆無だったからです。

(写真提供:写真AC)

昔からよく、「キレイなお母さん、若いお母さんは子どもの自慢」と言われますが、私はうれしかったことなどありません。そんなことより、なんとか母がボロを出さずに帰ってほしい……といつも思っていました。

でも、大きな大きなボロが出てしまったのです。休み時間、自分の席に居ると、クラスの男子数名に囲まれました。彼らが「あそこに居るのって、山田のお母さん?」と指さした先に居たのは確かに母でした。これは何かあったのだと察知しましたが、「違う」というワケにもいかず小さく頷くと、その中の一人が「信じられね~よな~。男子トイレに入ってきたんだぜ」と言われたのです。全身が真っ赤になり、熱を帯びていくのがわかりました。