お金に対するコンプレックスが稼ぐ原動力に

学校のお友達との〈格差〉を常に感じていた私でしたが、母からは「あなたは学費にかかっているのだから」といろんなことを我慢させられ、好きなものを買ってもらえるのは公立小学校通いの弟だけでした。それは親戚も同様で、最新のおもちゃも文房具も、プレゼントはいつも弟の元に……。

私のお金に対するコンプレックスは、この頃からずっと続いています。

よく、「第一線で、こんなに長く仕事を続けている人って、他に居ないんじゃない?」と言っていただくことがあるのですが、理由は二つ。特に大ブレイクを経験せず、まぁ低空飛行とは言いませんが、中ぐらいのところをずっと飛んでいるせいで上にも下にもいかないというのが一つ。

もう一つは、とにかく自分でお金を稼いで好きなものを買いたい…という揺るぎ無い想い。これが、私に次から次へと仕事をさせているのです。すごい才能があって続けているのではなく、「今月は、何が何でもこれだけ稼がなければ」という目標を、毎月なんとかクリアしているだけ。みんなが持っているものが自分も欲しいから…という理由でガムシャラに働いてきたのです。それは、離婚で「元夫を見返してやる」と思ったときよりも大きな、根深い想いかもしれません。

ですが、母は、「歯科医の夫をもつ妻というプライドがある」と事あるごとに言っていました。もっとも憶えているのは弟が歯科大学の受験に失敗し、「2浪はしたくない」と医大ではない道に進んだときのことです。