日本の食文化は、地域によって気候風土が大きく異なる自然豊かな日本列島で育まれてきました。食が多様化するいま、1960〜70年頃に食卓にのぼった全国のふるさとの味をまとめた『伝え継ぐ 日本の家庭料理』という全集が話題になっています。前号に続き、企画編集を行った日本調理科学会会長(当時)の香西みどりさんの解説とともに、各家庭で親しまれてきた小麦と米類を使ったおやつの一部を紹介します(構成◎本誌編集部 撮影◎長野陽一〈おあえだんご、ふなやき、ほたようかん、ごろし、ミキ、サーターアンダーギー〉、五十嵐公〈じょじょ切り〉、高木あつ子〈お好み焼き〉、戸倉江里〈ゆでもち〉)
長く受け継がれてきたレシピは理にかなっている
おあえだんごのレシピのように、もち米とうるち米を合わせただんごの作り方も多く見られます。もち米の粉だけで作ると、いわゆる白玉だんごの状態で、やわらかいけれどやや頼りない。少ししっかりした食感を出したいときは、うるち米を加えることで適度に粘るだんごに仕上げられるわけです。
小麦粉の生地で面白いのは、中力粉に重曹を入れた炭酸まんじゅうでしょうか。重曹を加えると生地がやわらかくなるだけでなく、二酸化炭素が発生するので気泡が入り、加熱によって膨らんでほわっとします。
日本調理科学会の前身である調理科学研究会を立ち上げたときの信念として、「調理のコツが真実ならば、そこには科学があるはずである」というものがあります。こうして長く受け継がれてきたさまざまなレシピを見ると、満足な調理環境になくても、限られた食材であっても、おいしく食べるためのコツの多くが理にかなっていることに驚かされます。
目分量で作られてきた家庭料理ですが、どなたでも再現できるよう数値化して、作りやすいレシピにしましたので、ぜひ全集を見ながらご自身で作っていただけたらと思います。