純粋に好きなことだけで繋がれるのが救いに

北海道札幌市で看護師として働く祐美さん(58歳・仮名=以下同)には、「推し活」を通して彼女を人生のどん底から救ってくれた年下の友だちが2人いる。

1人は、15年ほど前にスポーツクラブで知り合った11歳下の由香里さんだ。

祐美さんがスポーツクラブに通い始めたのには事情があった。

「40歳のときに夫を病気で亡くし、1年間ほど友人からの連絡も拒否して、家で臥せったままの生活をしていました。そんなある日、夫が入院中に『もう少し元気になったら、スポーツクラブで体力をつけたい』と言っていたことをふと思い出したんです。それで気分転換に通い始めたら、思いのほか楽しくて」

ちょうどその頃、昔からファンだった俳優の大泉洋さんが所属する演劇ユニットの芝居を観に出かけた。するとその客席に、スポーツクラブで見かけたことのある由香里さんの姿を発見したのだ。

「後日、『演劇を観に行っていませんでしたか?』と思い切って声をかけたんです。すぐに意気投合し、ファントークができる貴重な相手を見つけたと喜び合いました」

またその頃、日本ハムファイターズのファンになった祐美さん。「今度、一緒に札幌ドームに行ってみない?」と由香里さんを誘ったところ、彼女も野球の面白さに目覚めて日ハムファンに。

「由香里ちゃんという友人ができ、一緒に芝居や野球場に通ううちに、夫を亡くした寂しさは薄らぎ、外へ目を向けられるようになっていきました」(写真提供:photo AC)

「由香里ちゃんという友人ができ、一緒に芝居や野球場に通ううちに、夫を亡くした寂しさは薄らぎ、外へ目を向けられるようになっていきました。純粋に好きなことだけで繋がれる、当時の私にはそれが救いだった。ちなみに、由香里ちゃんはその後、職場の野球好きの同僚と結婚したんですよ」