イラスト:大塚砂織

 

メーガン妃出産報告。異例づくしのわけは

2018年5月に行われたイギリス王室のヘンリー王子とアフリカ系アメリカ人で元女優のメーガン妃の結婚式。ゴスペルの「スタンド・バイ・ミー」が歌われるなど、伝統的なロイヤルファミリーではありえない型破りな式に国民は仰天した。

何かとお騒がせな次男夫妻は、ロイヤルベイビーの誕生でも一波瀾を巻き起こした。19年5月6日、第1子アーチー王子誕生の第一報メールがメディアに一斉送信されたのは、出産の8時間34分後。その約40 分後にはインスタグラムの公式アカウントに「男の子でした!」というメッセージだけが投稿された。

待望の赤ちゃんの写真はなく、出産場所も明かされなかったのは異例のこと。英王室と英国メディアの間で長らく続けられてきた「出産報告は必ず直後。退院時には病院玄関で夫人が赤ちゃんを抱え、夫婦でにこやかに写真撮影に応える」という慣例を破り、マスコミをシャットアウトした。アーチー王子のお披露目が行われたのは2日後。ウィンザー城前に、彼を抱いて現れたのはヘンリー王子だった。

これらの行動は、メーガン妃がフェミニストであり女性としての役割を押し付けられることに疑問を持っていることに起因する。また、母であるダイアナ元妃がメディアの犠牲になったと考えているヘンリー王子の「家族のプライバシーを守りたい」という意思もあったのだろう。公務を担う王族といえども、出産からわずか数時間後に化粧をし、ハイヒールを履いて公衆の面前に出るのは負担が大きい。

メーガン妃はこれまで、ストッキングを穿かないなど自由な服装や、出産前のお祝いで2000万円のパーティーに興じるなどの行動が猛烈に批判されてきた。イギリス王室はSNS上の誹謗中傷コメントの削除や悪質なユーザーアカウントのブロックといった前代未聞の処置を行ったほどだ。

一方で、伝統に囚われず現代的な女性のあり方を体現する彼女が、新世代の王族として新たな子育てやライフスタイルを示してくれるのではという期待の声も聞こえる。メーガン妃は、完璧なプリンセスであることを期待され苦しんだ、ダイアナ元妃の無念を晴らせるのだろうか。夫婦の今後から目が離せない(ロンドン在住)