比企能員を殺害した忠常は「武士」かつ「勇士」

本当は「武将」と「武士」の中間に、100人くらいの家来がいる層を想定したいのですが、まあ取りあえずは二つに分けるとして。

さて、お笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行さんが好演し、第32回にて悲劇の最期を遂げた仁田四郎忠常は、「武将」と「武士」のどちらだったでしょうか? 

たぶん「武士」であり、かつ「勇士」でしょう。

忠常は富士の裾野の大巻狩りで大イノシシを仕留め、その後に起きた曾我兄弟の敵討ちでは、曽我十郎を討ち取っている。「勇士」と呼ぶにふさわしいけれど、資料を見る限り、土地をたくさん持っているイメージがありません。

狡猾な北条時政からすると、殺し屋として使うのにもってこい。

恩賞に釣られた忠常は、史実として、比企能員が北条邸にやってくるのを待ち構え、能員を躊躇なく殺害したのです。

このとき忠常の相棒を務めた荒くれ武者は、天野遠景。彼は頼朝の命を受けて甲斐源氏の有力者・一条忠頼の暗殺に成功し、その功績を以て九州の行政に携わる重職に抜擢されました。ところが成果は上がらず、みごとに失敗。

まあ、本質は殺し屋ですから、デスクワークは不得意だったのでしょうね。失意のうちに関東に呼び戻され、沈淪していたところを、時政に殺し屋として雇われた。さすがワルの時政、人使いがうまい。