ーー元来、佐賀さんは、こうと決めたら猪突猛進、集中するタイプ。朝起きて、与えられたリハビリをこなし、合間には独自の筋トレや言語療法士による歌のプログラムも組み入れて夕方6時までリハビリづくしの毎日が始まった。コロナ禍の中で、母が久しぶりにお見舞いに来るというその時間さえ惜しいと感じたという。

自分だけのリハビリじゃないんだ

11月にはかなりよくなるだろう、12月にはディナーショーで復帰できるだろうという目標を立てていたのですが、一向によくならない。少しでも早くよくなって、迷惑をかけたLE VELVETSの一員として一日も早く復帰したいという一念だったのに、こんなはずじゃないと焦りが出てきました。事務所から「今の様子を写真か動画で送って!」と言われても、自分の姿を見せたくなくて拒否。メンバーを始め、周りが心配してくれているのはわかっていたけれど、誰にも連絡をとりませんでした。

ーー自分の姿を認められなかったつらい時間を、佐賀さんは少し言葉に詰まりながら思い出し、語ってくれた。体が思うように動かない苦しさを誰にも伝えられず、耐えるしかない日々は、佐賀さんをいやでも孤独に追い込んでいた。コロナ禍で面会が禁止されていた為、病院と連絡を取りながら一進一退のリハビリの様子を傍らで見守るしかなかった所属事務所の方々も、そのころが精神的に最もつらかったという。

そんな中、事務所に届いていたファンのみなさんからのメッセージや手紙が病室に届けられたんです。「がんばってください」「いつまでも待ってます」といった励ましの言葉に触れて、力をいただきました。たくさんのお守りをテレビの前に並べて眺めながら、「こんなにも自分のことを気にしてくれている人がいる、このリハビリは自分だけのためじゃないんだ」と思い知ったのです。

LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)の華やかなステージ。左から日野真一郎さん、宮原浩暢さん、佐藤隆紀さん、佐賀さん(ステージ写真提供◎佐賀さん 以下同)

またスイッチを入れ直してリハビリに励み、ついに年末には退院。一人暮らしの僕に付き添いたいという母親と事務所を振り切って、一人で東京に戻りました。退院の荷物をもって新幹線に乗って帰るのは正直、しんどかった。でも、それもリハビリです。