誠心誠意を尽くして、その想いを受け止めたい

ただ残念なのは、どういう気持ちで描/書いたのか、私には確かめようがないことだ。

画家と違って脚本家は同じ現代を生きているけれど、とくにドラマの場合は、現場に脚本家がやってくることはほとんどない。

舞台や映画なら、演出家や監督が脚本を兼ねていることも多いので、直接聞くことができなかったとしても、現場でのやりとりをとおして伝わってくることはある。

だから、「想像する」ということを忘れちゃいけないんだろうな、とも思う。その人たちが命をこめてつくりあげた作品を、ただ見るだけにせよ、演じるにせよ、私の人生の一部にお借りしているのだから。私も誠心誠意を尽くして、その想いを受け止めたいなと思う。まっ、単純に、そうするのが私にとっては楽しいってだけなのだけどね。

 

※本稿は、『余白』(NHK出版)の一部を再編集したものです。


余白』(著:岸井 ゆきの/NHK出版)

近年、主演作・話題作への出演が続き注目が集まる彼女が、これまで明かすことのなかった30歳の女性としてのあるがままを「いましか手元にとどめておけないもの」として残した、初のフォトエッセイ。53篇におよぶエッセイでは、デビューのきっかけから恋愛や子どもを持つことへの気持ちまで、まっすぐで飾らない言葉で紡がれたものがかり。自然体な表情を切り取った撮り下ろし写真、そして本人秘蔵のスナップで編み上げた、プライベート感あふれる”岸井ゆきののすべてがわかる”一冊。