依存性薬物が鎮めてくれるもの

田中 :そして薬物を使う人たちの背景もあまり語られて来なかったですよね。高知さんは、ご自分でその背景を語られているので、ご存知の方も多いかもしれませんが、小さい頃、親御さんがいなかったとか、お母様が自殺されているとか、本当の親だと思っていた親が違っていたり。高知さんには寂しい感情を押し殺してきた幼少期がありました。

松本 :そういう長年抱えてきた「負の感情」を依存性薬物が、いい具合に鎮めてくれるものなのですよね。お酒もそうです。

田中 :なるほど。

松本 :だから単純な「快感」というものだけではないんです。辛かった気持ちがちょっと楽になるというので、「なんかこれいいね」と思ってしまう。
さらに言えば、そういった薬を勧めてきた人が憧れている人だとか、自分のことをすごく理解してくれた人だとか、断れない相手というケースが多い。そういうことも知られていかなきゃいけないです。

田中 :急に反社会的な売人が近づいてきて、それが入口になるのではない、と。お二人の場合はいかがでしたか?

高知 :そうですね。自分の場合も理想としている人がオシャレに薬物を使っていました。だから僕はどちらかというと、自分の方からその仲間に入れてほしくて、接近してしまいましたね。手にした時は仲間になれるということで嬉しかったです。

田中 :遼さんは?

橋爪 :僕の場合は友人でした。自分の肩書きとか、芸能の仕事をしてるとか取り払って、自分個人で付き合ってくれていた友人でしたね。

田中 :なるほど。芸能人でも、有名人ジュニアでもなく、ありのままの遼さんを見てくれる友達に惹かれたというのは、逆を返せば、二世として生まれてきたことに葛藤やプレッシャーがあったのですか?

橋爪 :有名人の家族なんだからしっかりしなきゃいけないという思いはあったかもしれません。俺が何かしたらダメだ。妹がいるので、いいお兄ちゃんであろうとか、いい息子であろうって子供の頃から思い続けてきたところはあります。

田中 :そういう意味では高知さんも大女優の旦那と言われたことも同じかもしれませんね?

高知 :もう6年経ったので…忘れかけてましたが、わかるところはありますね。

高知さんと橋爪さんが、授賞式の最後に腕タッチ。

松本 :人は実際に辛さを抱える時には、頑張ってしまって興奮状態になる。緊張が続いている時には痛みに鈍感になっています。酷い肩凝りでも、少し楽になったところでやっと気づいて、整体に行くようになったりする経験は誰でも覚えがあるのではないでしょうか。ストレスで心身症や円形脱毛症、胃潰瘍になる方達というのは心に負担がある状態や痛みに気づきにくい人。アルコールや薬物に依存してしまう人たちも同じような特徴があるのです。

「「芸能人の薬物事件 ~報道のあり方を考えよう~」座談会 後編」に続く