飛行機のタラップを降りる20代後半の曽野さん。前が夫・三浦朱門さん。昭和35年8月撮影、本社写真部
人生100年時代と言われる昨今、1931年生まれの作家、曽野綾子さんも現在91歳となりました。60代、70代、80代、90代と年齢を重ねるにあたって変わる体調や暮らし、人づき合いへの対処法についてさまざまな考えを巡らせてきた曽野さんですが、特に「60歳に差し掛かったら、そこからいかに生きるか」をあらためて考えるべきと言います。一方、老年期に肉体が衰えることは、むしろ「大切な経過」だと思っているそうで――。

人はどう老化していくのか

人は個々人の弱点から老化する。

私とほぼ同い年でボケてしまった女性は、お財布の中身、つまりお金の価値と、出歩くのに必要な金額とを連動して考えられなくなっている。

百円に満たない小銭だけを持って外出し、帰りにはタクシーに乗ろうとするので、それに気がついた友だちがとっさにお金を渡して事なきを得たのだが、入居中の老人ホームの玄関に着いて、ほとんど無銭乗車をされてしまうことに気がつく運転手さんも気の毒である。