防犯カメラに写っていたもの

会社としては、警察に被害届を出すことも検討し、現場事務所の玄関に設置されていた防犯カメラを解析した。

すると、当該時刻に外部から誰かが侵入する姿も、Aさんが逃げ出す姿も写っていなかった。そのかわりに写っていたのは、Aさんらしき人物が棒のようなもので壁を叩いて回る姿だった。

もっとも、Aさんは外部からの侵入者が現場事務所の壁をハンマーで叩いたのは事実だと主張し続けた。そこで、会社側は、防犯カメラに侵入者の姿が写っていなかったことをAさんに伝え、被害届も出さなかった。

『自己正当化という病』(著:片田珠美/祥伝社新書)

この話を信用すれば、現場事務所に外部から男が侵入してハンマーを振り回し、壁を叩いたというのは、Aさんの作り話だったことになる。

防犯カメラの映像という証拠がある以上、どちらの主張に信憑性(しんぴょうせい)があるかは一目瞭然だ。だから、私自身もだまされていたような気がして、憤懣(ふんまん)やるかたなかった。