Aさんの思惑

上司が帰ってから、Aさんと一対一で話したのだが、悪びれた様子は全然なかった。

むしろ、「僕は、内勤か営業を希望していたのに、現場に回されて嫌だったんです。大学まで出ているのに、どうして現場で中卒や高校中退の職人と一緒に働かないといけないんですか。何度も『内勤か営業に回してください』とお願いしたのに、『それはできない』と言われた。会社のほうがおかしいのだから、もう辞めてやる」と息巻いた。

どうやら、殴り込み事件をでっち上げて、自分がその被害者であるかのように装えば、内勤か営業に回してもらえるのではないかという思惑があったようだ。

この会社では、大卒であっても新入社員はみな1度は建設現場に配属されることになっているらしい。現場の事情がわかっていたほうが、内勤や営業の仕事に携わるにしてもいいという考え方による方針だと上司は説明した。だが、それをAさんは受け入れられなかったのかもしれない。

配属を変えない会社のほうがおかしいと息巻いた(写真提供:Photo AC)