しかし、兄が月に一度、K精神科病院に診察と薬をもらいに行く日はカレンダーに印を付けていて忘れない。母は必死になって兄を起こしていた。その朝だけ、母は正常になり、起きないと病院に「起きません。遅れます」と、電話をしていた。

私は膵胆管合流異常の入院・手術のこともあり、母にヘルパーさんが来てくれること、介護施設でのデイサービスやショートスティに行くことを望んでいた。

地域包括支援センターに相談に行ったが、係員に「生まれつきなら、あなたは急いで手術する必要はない。会社に電話をかけられるなら、お母さんの認知症はたいしたことはない」と、断られてしまった。

兄の通うK精神科病院の担当医師に電話しても、「みんなそう言って、患者を入院させたがる。お兄さんの今の状態はそんなにひどくない」と言われた。

母も兄も、他人との会話はしっかりしているので、一緒に暮らしてみないと、自分だけで生活できないことは分からないのである。

以前に、私は兄と普通の会話ができない状態の時があり、近所のかかりつけの内科の医師に嘆いたことがある。するとその医師は「あなたが統合失調症で、お兄さんがあなたの面倒をみていたかもしれない。逆だったかもしれないよ」と言われた。それ以来、私は兄がいることで不幸だと思う気持ちが薄れた。