私は、そのかかりつけの内科の医師に、胆嚢を取る手術をすることを相談した。「信じられる医師にもう一度診てもらいなさい。紹介状を書く」と言ってくれた。

消化器の専門医として信頼できると思ったのは、30年前に会社と同じビルの診療所にいた医師だ。その医師は会社の近くのM病院の副院長になっていた。30年もたったら人間は変わっているかもしれない。しかし、その医師しか思い浮かばなかった。

紹介状をもってその医師の診察を受けたが、答えは最もだと思うものだった。

「なんで4カ月も検査をしているの。胆嚢がんだったら手遅れになってしまう。すぐMRIの検査を手配する。うちの病院に内視鏡専門の良い先生がいるから紹介しよう」。

すぐにMRIの検査をして、内視鏡専門の医師に会うことになった。結果は膵胆管合流異常だったが、画像を見せながら丁寧に説明してくれた。そして、胆嚢を取ることをすぐ決められないのなら、4カ月に一度エコー検査と血液検査をしてがんができていないか経過観察をすると言われた。

かかりつけ医師の紹介状には、私が困った家族を抱えて、手術をためらっていることも書いてあったようで、内視鏡専門の医師が同情してくれたのは嬉しかった。

私は胆嚢を取るべきか、取らざるべきか、毎日迷いに迷った。

その間に兄が大変なことになっていることを知らずにいたのである。

<2につづく