料理の仕事をするきっかけ

八木さんは夫の親友で、よくわが家にみえたから、新妻の私はせっせと家庭料理を出した。

そのたびに八木さんはおいしいおいしいと言ってくれた。料理するスピードがいいとも言ってくれた。

『エプロン手帖』(著:平野レミ/ポプラ社)

あるとき、「四季の味」という雑誌にリレーエッセイがあって、八木さんは自分が書いた次に私を指名した。

「料理のエッセイなんか書けないから夫を指名してください」と私は言ったが、「ふだんぼくにごちそうしてくれるような料理のことを書けばいいんだよ」と八木さんが言い、私は初めて自分勝手な料理のレシピを書いた。

「四季の味」はその後、私の料理を写真に撮って出してくれた。それがきっかけで、私は料理の仕事をするようになったのである。