小林先生いわく、どんな状況でも今この瞬間から未来を描くことはできるそうで――(写真提供:Photo AC)
コロナ禍を経て、じんわり続く停滞感や孤独感が私たちの心身を知らない間にむしばんでいます。自律神経研究の名医であり、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんは、もやもや・イライラを上手にリセットするには「大胆に、意識的にリセットすること」「戻すのではなく、新たに始めること」が必要だといいます。その小林先生いわく、どんな瞬間も通過点であり、次に何をするかを考えワクワクしながら生きていくことが大事だそうで――。

99%つらいことでも「1%の希望」を見る

私は大学を卒業する直前、足の大ケガをして入院していたことがあります。学生にとっては一番楽しい時期。

進路も決まり、多くの学生は卒業旅行へ出かけていましたから、そんな時期に入院するなんて「自分は最悪だ」と呪っていました。

しかし今振り返ると、入院していたあの期間に私は医師としても、人としても、とても貴重な経験をしたと思っています。

隣のベッドで入院していたのは私と同じくらいの世代の男性。骨肉腫を患っていました。

彼自身は自分の病状をそこまで詳しく知りませんでしたが、私は「彼がそう長くは生きられないこと」を知っていました。