今日できることがある

結果として、しばらくした後に彼は亡くなったのですが、入院中、私たちは毎晩のように話をしました。

彼が小さい頃どんな子どもで、どんな人生を送ってきたのか。そんな話を毎晩毎晩聞いていました。

彼と話していてとても印象的だったのは、病状は重くても、常に前向きだったこと。年齢が若く、未来に希望を持っていたこともあるでしょう。

『リセットの習慣』(著:小林弘幸/日経BP 日本経済新聞出版)

人生におけるほんのわずかな期間でしたが、彼と過ごした時間が私にさまざまなことを感じさせてくれたことは間違いありません。

医者をしていると、絶望的な状況に直面することもたしかにあります。

しかし、そんなときでも、できるだけポジティブな面を見つけ「ここの数値はよくなってるね」「昨日に比べて顔色がすごくいいね」など患者さんを勇気づけ、前向きになれるような話し方をするように私は心がけています。

数カ月後に最期を迎えることがわかっていたとしても、絶望しながらその期間を過ごすのと、少しでも希望を持ちながら過ごすのとでは、まったく違う意味があると思うからです。

人生最後の一日だったとしても「終わりに向かって生きる」のではなく、今日できることがある。そう私は信じています。