「終の住処」の窓辺から

入院前から固形物が食べられず、おかゆを茶碗一杯食べるのがやっとだった。すっかり痩せてしまい、骨と皮の状態で歩くこともしんどいが、90人近くいる今度の施設にはもっと要介護度の高い人がいる。食堂まで杖をついていけるうちはまだ大丈夫かなと、自分を励ます。

平均寿命が延びることはいいことなのだろうか。ただ生きているだけでもお金は必要。税金もとられる。いろいろな費用は年金頼みだし、わずかな貯金などすぐなくなってしまう。

選挙権を得てから、施設に入る78歳まで必ず投票所に足を運んだ。

最近は手がしびれ出して、文字がうまく書けなくなってきた。でも、いまの施設に来ていいこともある。郊外にあるので、私の部屋の窓から季節のうつろいを眺められることだ。


※婦人公論では「読者のひろば」への投稿を随時募集しています。

アンケート・投稿欄へ