天真さん、宝塚を卒業後に”スカートデビュー”を果たしたものの、壮一帆さんに言われた予想外の言葉とは――(撮影:四方花林/写真提供:左右社)
宝塚歌劇団で「情報量の多いおじさん役」として愛された天真みちるさん。退団後に企業へ就職すると、華麗なる歌劇団と一般社会のギャップにおののきながら、その道のりをタンバリン片手に突き進んできました。その後、ひとりで生きていく覚悟を決めた直後に運命の人とまさかの結婚、さらには歴代トップスターたちが総出演の『エリザベート ガラ・コンサート』への大抜擢……。そんな元タカラジェンヌ・天真さん、宝塚を卒業後に”スカートデビュー”を果たしたものの、壮一帆さんに言われた予想外の言葉とは――。

スカートを穿ける、という事実

宝塚歌劇団を卒業した男役が、一番に挑戦してみたくなるイベント……それは、「スカートを穿くこと」だと思う。

私はかれこれ、宝塚音楽学校を卒業して以来、約13年スカートを穿かなかった。

といっても、在団中は、公演の中で「イロモノ」担当だったので、あくまで衣裳として、スカートを割と定期的に穿いていた方だったとは思う。

まあしかし、板の上ではなく、地上ではスカートを13年間穿かなかった。

そんな私が……スカートを穿く。

卒業公演中、お会いする宝塚OGの方々は、「辞めたらスカート穿けるよ~♪」と、とても楽しいイベントが待っているかのように皆口を揃えて私に囁いてきた。

だが、私にとってスカートが穿けることはさほど楽しいイベントでもなかった。

在団中は、絶対に穿いてはいけない!というようなお達しはなかったと思うのだが、一男役を研究している身としては「穿きたい!」というメンタリティにならなかった。

なので、卒業した瞬間からスカートを穿けるという事実が信じられなくて、向き合う気持ちになれなかったのである。

これは……向き合うまでに大分時間を要するだろう……。「よし!穿こう」と思うまでに、1、2年はかかるだろう……と、長期戦の覚悟でいた。