人間は、決してひとりぼっちではない

それでも橋田さんは、諦めてはいませんでした。プロットを話すから、メモをとってくれと言うのです。私は電話を耳に当てて、必死で橋田さんが語るプロットをメモにしました。

『歳はトルもの、さっぱりと』(著:石井ふく子/中央公論新社)

ただ、橋田さんの名前を汚してはいけないので、メモをそのままドラマにするのは諦めました。

橋田さんが語っていたのは、3時間スペシャルの最後に姉妹全員が集まり、次女の五月が、「ほんとに私、わがままだったね。みんなに、ありがとうって言いたい」と言う―そんな内容でした。その台詞は、橋田さん自身の思いだったのではないか。今、そう思います。

人間は、決してひとりぼっちではない。誰かに支えられて、ここまでくることができた。だから、「ありがとう」と言いたい。それが、橋田さんが最後に伝えたかったことだったのではないでしょうか。