「妹なんだから言うこと聞きなさい」の重み

あれは橋田さんが亡くなる1ヶ月ほど前だったと思います。橋田文化財団の件で、電話で話していたときのこと。橋田さんが、「『この先、ちゃんと財団のことをやります』と言いなさい」と、命令口調で言いました。

「あなた、そんな寂しいこと言わないでよ。今までだって、みんなでずっと一緒にやっていたじゃない」

そう反論すると、「あんたは私より一歳下で、妹なんだから。姉の言うことを聞いて、素直に『はい、やります』と言って」と、いつになくしつこいのです。なんだか心がざわつきましたが、橋田さんがあまりにも真剣なので、「はい、お姉さん。財団のことはきちんとやりますから、安心してください」と返しました。

橋田文化財団は、1992年に設立され、「放送文化に関する創作活動を行う個人または団体に対する顕彰」「脚本家、演出家、俳優等の人材育成」などを目的としています。

『渡る世間は鬼ばかり』が始まるとき、私が財団設立の資金について考えていたことは、橋田さんには言いませんでした。橋田さんのプライドを傷つけると思ったからです。でもたぶん、うすうす気づいていたのでしょう。だからこそ、私に後を託したのかもしれません。