トミヤマさん「女性向けマンガの世界は、すごくリアルな作品と、ファンタジー全開の作品の両方があって、両者が絶妙なバランスを保ちながら発展しているんですね」(撮影:本社・奥西義和)

楽しく暮らすおじさんの人生が興味深い

編集部 男性向けのマンガでも、最近話題の『定額制夫の「こづかい万歳」〜月額2万千円の金欠ライフ〜』はいかがでしょう?

毎月数万円のお小遣いをやりくりして趣味を楽しむ人々の姿が描かれています。あとは『1日外出録ハンチョウ』や『上京生活録イチジョウ』など、『カイジ』のスピンオフは等身大の生活の中にある豊かさをすくい上げている印象です。まぁ大槻班長も一条も、本編では男同士でしのぎを削っているわけですが……。

トミヤマ なるほど。確かに数は多くないけど、まったく存在しないというわけではないですね。『孤独のグルメ』なんかも、上昇志向とは無縁の日常を描いていますし。

山本 男性向けのマンガの世界でも、「こづかい」や「食」、「人気作品のスピンオフ」といったキャッチーな要素をひとつ挟めば、ありのまま楽しく暮らすおじさんの人生を描きやすいのかもしれませんね。弱いまま幸せに生きていく男性像というのは、作り手的にも興味深い概念です。

 

※本稿は、『女子マンガに答えがある――「らしさ」をはみ出すヒロインたち』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


女子マンガに答えがある――「らしさ」をはみ出すヒロインたち』(著:トミヤマ ユキコ/中央公論新社)


もう「少女」を名乗れない私たちの、人生の答えはマンガにある! 不朽の名作から今が旬のマンガまで、幅広い作品中での女性たちの描かれ方を縦横無尽に語り、現代女性の欲望と生き方を探る。「おもしろい女」「たくましい女」「ハマる女」「嫌な女」……あなたに似た女が、マンガの中にはきっといる。