信玄が本拠を甲府から移さなかった理由

正確に計算したことはありませんが、工費は莫大だったでしょうから赤字だと思います。

それでも信玄は工事を遂行した。それは彼が、甲斐国、甲府の町、そこに暮らす人々を大切に思っていたからではないでしょうか。

大きな領国を築いた信玄は、本拠を移すことだってできた。たとえば諏訪。上野や越後との連絡を重視するなら上田も候補に入れられるかもしれません。

でも、信玄は赤字を厭わずに治水をし、甲府に留まった。彼は清洲から小牧へ、小牧から岐阜へ、と本拠地を変えていく信長の事例を知っていたのに、です。

またどう見ても有能だし、行動力もあった。だから彼が甲府に居続けたのは、やはり「甲斐の地への愛着」しか答えがないのです。