文字を書くことで自律神経が整う

石崎 つまり、ペンで文字を書くことによって自律神経が整うと。

小林 ええ。たとえば塗り絵は、余計なことを考えず「色を塗る」ことだけに集中するため、自然と深い呼吸になって自律神経を整えるのですが、文字を書くことにも同じ効果が期待できます。

石崎 写経も、一文字一文字に想いを込めながら書いていくなかで無の境地になり、写経をしているあいだは浮世から離れることができますね。

小林 別の世界へ飛ぶことが大切なのです。いつの世も、生きていくのは楽ではないと思います。家庭環境に悩み、受験に悩み、仕事のことで悩み、恋愛に悩み、家族のことで悩み、金銭問題に悩み、体調不良に悩み、親の介護問題に悩み、老後問題に悩み、死別の苦しみに悩み……。誰の人生もままならないことの連続だといえるのですが、どんなに悩んでも問題は解決しない。ただ、別の世界へ意識を移し、翼を休めることならできるのです。

石崎 心の休息時間を設けて自律神経を整えれば、頑張ろうという意欲が湧いてきそうです。

小林 湧いてくるんですよ。最近注目されているマインドフルネスは、「いまここ」に集中している心のあり方ですが、文字を書くことはまさにマインドフルネスだと思います。ポイントは呼吸です。私はスポーツドクターもしていますが、一流のスポーツ選手はどうすれば呼吸が整うのか、自分なりの方法をもっています。

石崎 普段の教室では、小筆で文字の練習をすることと仮名文字を書くことを推奨しているのですが、いずれも呼吸がポイントなのです。小筆で終筆をスーッと伸ばしながらフ―ッと息を吐くよう指導しています。

小林 あえて仮名文字を書くというのも斬新な提案ですね。

石崎 漢字は角ばっているのでパッパと機械的に書いてしまいがちですが、ひらがなは丸みがあるので呼吸の調整を意識して書く必要が生じます。

小林 なるほど。私はリズム感も大切だと思います。自分のなかの一定のリズムで文字を書いていると、いわゆるゾーンに入った感覚を覚えます。ほかのことをいっさい忘れて書くことに没頭する。これを習慣化すれば、ストレス社会を乗り切るための強い武器を備えたようなものです。

 

※本稿は、『気がつくと自律神経が整う! メンタルアップ文字トレ』(徳間書店)の一部を再編集したものです。


気がつくと自律神経が整う! メンタルアップ文字トレ』(著:石崎白龍、監修:小林弘幸/徳間書店)

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10万人以上の文字を診て指導してきた書学博士で筆跡カウンセラーの著者と、著者累計1200万部の自律神経研究の第一人者が伝える、メンタルアップ文字トレ。