お金を使ってくれる高齢者を大切に

それなのに、世の中ではいまだに「生産性神話」が大手を振って語られています。効率や成果を競い合ってきた社会から、少しも変わっていないのが実情です。

需要(消費)が伸びず供給(生産)が過剰となっているのですから、生産性は多少低くても、消費を増やすほうが重要であるにもかかわらず……。

極論すれば、こうした状況では「真面目にコツコツ働くばかりで、節約してお金を使わない人」よりも「ぶらぶらしていてお金を使ってくれる人」を大切にしたほうがいいわけです。

私が高齢者たちこそ日本を救うと考える理由のひとつは、消費者としてのパワーです。

何はともあれ、個人金融資産のうちの7割、約1400兆円は60歳以上の人がもっているわけですから。

また、高齢者の8割が元気で自立しているとも先述しました。

すべての高齢者に経済的な余裕があるわけではないのですが、お金を貯め込んで爪に火を点(とも)すようにして生活している人ばかりでもありません。

大企業に定年まで勤めて企業年金に恵まれ、住宅ローンも払い終え、退職金ももっている人が大勢いるのです。

豊かな日本という国をつくり上げた立役者なわけですから、これから好きなようにお金を使うことに遠慮する必要はありません。

シン・老人は「お金を使ってくれる人」として、経済的な観点からも大切に扱われるべき存在なのです。

※本稿は、『シン・老人力』(小学館)の一部を再編集したものです。


シン・老人力』(著:和田秀樹/小学館)

本書では、世界基準に照らした医学的な方法論だけでなく、30年にわたり、6000人以上もの高齢者と向き合ってきた私の経験則に基づき、「シン・老人力」をつけるための具体的な方法を提案します。