今ある悩みや苦しみをすべて手放すには
私たちの持っている「信念」は、親や友人・知人、メディアなど周りのさまざまなものから影響を受けるなかで、知らず知らずのうちにつくり上げられているものです。
誰もがその無意識の信念に基づいて、考えたり、話したり、行動したりします。そして、それが自分の人格や運命を決めているのです。
ブッダは、そんな私たちの根底にある信念や思考体系を変えようとしました。
もちろん、子どものころから積み重ねてきたものなので、変えることは容易ではありません。でも、自分の運命を、人生を本気で変えたいと願うのであれば、そこに立ち返るほかないのです。
逆にいえば、大本を変えることができれば、今ある悩みや苦しみをすべて手放すことができるのです。
例えば、周りの人とコミュニケーションを取るのが苦手で、人付き合いがうまくできず悩んでいる場合。
「自分は生まれつきこんな性格だから不幸なんだ」「誰とも仲良くなれないんだ」と運命だけを嘆いていても、なにも変えることはできません。
そんなとき、「周りの人に感謝の気持ちを持ち、それを少しずつでも伝えるようにしてみよう」という信念を持ってみる。
小さなことでも「ありがたいな」という思いを持ち、「ありがとう」と声に出して伝えるようにしていく。
そうしていくことで、周りの人のあなたに対する評価や態度が変わり、向こうからも話しかけてもらえるようになったり、コミュニケーションが生まれたりするようになるかもしれません。
「人に感謝する」という信念を持ち、思考を変え、言葉を変え、行動を変え、習慣を変えることで人格が変わり、運命も変わっていくとは、こういうことです。
仏教とは、自分自身を振り返るための“気づきの手法”をパッケージ化したものなのです。
※本稿は、『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』(著:大愚元勝/アスコム)
本書では、長年にわたり数多くの人々の悩みや苦しみと向き合ってきた禅僧である著者が、仏教の思考法に基づき、自分の心との向き合い方、負の感情の手放し方をお伝えしていきます。