「傷ついた心」を他人に押しつけてしまう

大人になれば、もっとも近しい関係の相手が自分のヒーリング・ファンタジーを実現してくれるのではないかと期待する。

精神的な孤独もいずれは、誰かが癒やしてくれると考えるかもしれない。だがこうした幻想が、事態をかえって悪化させることもある。

ある女性は、うつ状態の父親を幸せにできれば、いつかは自分も自分の人生を自由に生きられると密かに信じていた。

ひたすら夫に尽くせば、いつか自分が望んだように愛してもらえると信じた女性もいた。しかし、いつまでたっても関心を向けてくれない夫に腹を立てていた。

その怒りは、どんなに努力してもヒーリング・ファンタジーを実現できないと悟ったときの不安をごまかす感情だ。彼女は子どものころから、「いい子」にしていればだれからも好かれると信じていたのだ。

ふつうは自分のヒーリング・ファンタジーを人に押しつけようとしないものだが、愛情がからむ関係において、相手を試してみようとする際にみられることがある。「私のことが好きなら、※※してくれて当然でしょう?」ということだ。

しかし、わたしはパートナーとの関係に悩んでいる相談者には、こんなふうに伝えている。

「あなたは、自分のヒーリング・ファンタジーのままに、子どものころからずっと望んでいた愛情を押しつけようとしているのですよ」と。