私から母へのラブレター
明らかにノーメイクの母に自身の衰えを語らせたり、年齢を重ねた肌の質感を大きく映し出したり。映像は母の老いを直視し、容赦なく捉えていく。
――女性は若くて美しいほうがいいという決まりきった見方があります。とくに見られる職業である女優にとっては、常に突き付けられる問題です。私自身、自分の老いに関しては注意を向けないようにして生きていますが、どうしても「平気よ」とは言い切れないところもあります。
ただ、母に関して言えば、彼女なりの「老いの哲学」を持っていて、すごくいい感じで年を重ねています。もちろんシワはいっぱいあるけれど、そこに彼女ならでは美しさがある。お茶目なところもエレガンスも全部健在。で、シワもちゃんとある。そこを見せたいと思いました。
母を知りたいと思って撮り始めた映画は、できあがってみたら、私から母へのラブレターのようなものになりました。私は姉妹の中で自分だけが、母と近しい関係を築くことができないことにずっと悩んでいた。
そんな母と一緒に映画を作り上げて見えてきたものがあります。距離があろうと居心地が悪かろうと、母娘関係はそれ自体が美しい。唯一無二で、だからこそ素晴らしいということです。
私と母との関係は、正直うまくいっているとは言い難いものでしたが、この関係こそが私たちで、そこに価値がある。そう思えるようになったのです。本作を撮ることができて、本当によかったと思います。