二つのシスターフッドの物語

またこの作品は、二つのシスターフッド(女性同士の連帯)の物語でもあります。一つはジェイドとその仲間や史奈子という横軸の連帯。もう一つは、過去と現在をつなぐ縦軸の連帯です。

物語では、若いシングルマザーたちに社会運動のいろはを教える元運動家のローズという初老の女性が登場します。年齢を重ねて、今の若い人に共感できないと思っている人たちも、「社会を変えよう、良くしていこう」と思っていた時代があるはず。そんな自分をもう一度思い出してもらいたくて、彼女を登場させました。

「縦軸の連帯」は、もっと大きな視座で言えば、歴史の継承ともいえます。イギリスの学校教育では、たとえばかつて女性参政権を求め、時には暴力的な手段もいとわず活動した女性団体「サフラジェット」についても、その運動の意義とともに学ばせている。そうした歴史の積み重ねが現在を作っているという感覚が、子どものころから身につくのですね。

翻って日本では家父長制的な考え方が根強く、女性は社会で男性と肩を並べることはないと思い込まされてきました。また女性側も、「分をわきまえたほうがうまくいく」と、問題を内面化して処世術にしてきた部分があります。

でもこれからの時代は違うと思うのです。黙っていても状況は何も変わりません。自分のことを貶めたりせずに、おかしいと思ったら毅然としてNOと言う。そうした自分自身へのリスペクトが未来を切り開くのではないでしょうか。