厚生労働省が公開している『令和2年版 厚生労働白書』によると、2040年の平均寿命は男性83.27歳、女性89.63歳と推計されるそう。そこで今回は、老化を受け入れて「うまく老いる」コツを、評論家の樋口恵子さんと精神科医の和田秀樹先生の対談形式でお送りします。和田先生は超高齢社会のいま、「ひとりでいろんな診療科を診ることができる総合的な視野を持つ医者がいい医者だと思います」と言っていて――。
高齢者に必要なのは専門医より総合診療医
樋口 年をとると医者にかかる機会が増えていきますが、いい医者に出会えるかどうかで、その後の生活の質と言いますか、充実度も違ってくるように思います。でも、その「いい医者」っていうのがクセモノでね。高齢者にとっての「いい医者」の定義ってなんなんでしょう?
和田 まず、大前提として言えることは、今は超高齢社会ですから、ひとりでいろんな診療科を診ることができる総合的な視野を持つ医者がいい医者だと思います。
1970年当時、日本は人口に占める高齢者の割合が7%だったんです。7%を超えたことで、日本は初めて高齢化社会になりました。そして、94年に14%になって高齢社会になり、2010年には超高齢社会の定義とされる21%を超えて23%となり、そこからさらに伸びて、現在の高齢化率は29.1%です。
人口構成が若かったころは、40代、50代の患者さんが多数を占めました。この年代の人たちはひとりで病気をいくつも抱えているということはほとんどないので、臓器別の専門診療科でうまくいっていました。医学も、臓器ごとに専門性を高めていく方向に向かって正解でした。
ところが、高齢者が多い時代になると患者さんも70代、80代が増えてきました。高齢の患者さんの特徴は、高血圧で内科を受診し、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や腰痛などで整形外科を受診し、過活動膀胱(ぼうこう)で泌尿器科を受診し……というようにひとりで複数の病気を抱えることになります。