少ない運動量で大きな効果を得る「スロトレ」開発者で、自らもボディビルダーとして活躍した元東大名誉教授の石井直方さん。2024年2月に逝去されてからも、「難しいことを簡単に」まとめられている著作からは多くの学びがあります。そこで、健康寿命を延ばすために重要な「筋力」や、シニアに適した筋トレ方法を解説した『シニアのための筋トレ学 「生活筋力」の土台をつくる方法』より、一部を抜粋して紹介します。
健康寿命から考える「生活筋力」の必要性
厚生労働省が2024年7月26日に公表した簡易生命表によると、日本人の平均寿命は、男性が約81歳、女性が約87歳(2023年)でした。
一方で、健康寿命【健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる」と回答した年齢】はというと、男性で約73歳、女性で約75歳。平均寿命とはそれぞれ8年間、12年間ほどのギャップがあることがわかっています。
これを平均寿命における占有率に置き換えてみると、男性では一生のうちの約10%、女性では約13%を占める年月になります。
長生きできるのであれば、たとえ体力は低下しても、誰もが家族に迷惑をかけず平均寿命まで自立した生活を送りたいと願うもの。そして、それこそが自身にとっても家族にとっても大きな幸せにつながります。
つまり、平均寿命と健康寿命とのギャップを今以上に広げることなく、逆にできる限り縮めていくことが我々一人一人に託された課題となっています。
そして、その課題解決こそが個人や家族の幸せはもとより、ひいては社会貢献にも結びつく時代になってきたといえるのです。