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阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。MCを務めている番組でときおり「早期退職さん」という企画を放送しているそうで――。
※本記事は『婦人公論』2025年10月号に掲載されたものです
※本記事は『婦人公論』2025年10月号に掲載されたものです
MCを務めている番組で、ときおり「早期退職さん」という企画を放送する。勤めていた会社を定年前に辞め、まったく異なる職業に転じた人たちを取材して紹介するのだが、今まで十数例取り上げてきた中で実感するのは、いずれも奥様の逞しさである。
たとえばAさんは技術系の会社に勤めていたが、役職が上がり、本来得意としていた現場仕事から離れてしまった。
「このままサラリーマンを続ける意味があるのだろうか……」
モヤモヤした気持を抱きつつ過ごすうち、ふと、会社を辞めて新たな仕事を始めたいという衝動に駆られる。
「もっとやり甲斐のある、自分に合った仕事を見つけたい」
とはいえ、具体的に見つかっていたわけではない。もともと無口だったAさんは、同僚にも上司にも、まして妻にも相談することができないまま、一人コツコツとリサーチを始める。そして、「これぞ」と思う仕事に出合う。
