演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第48回は俳優の奥田瑛二さん。50歳を機に映画監督に挑戦した奥田さん。緒形拳さん主演の映画を撮りたいと思っていたら――。(撮影:岡本隆史)
年配の俳優を主役に
奥田さんの監督第一作は連城三紀彦原作の『少女 an adolescent』(2001年)で、不良警官(奥田さん)と少女の純愛物語。
続いて『るにん』(04年)は松坂慶子さん主演で、奥田さんも根津甚八さんも、小説家の島田雅彦さんも出演していた。
そして『長い散歩』(06年)は名優・緒形拳さんの孤独な老人と、虐待されている少女の道行き物語で、3本ともみんないい。
――そうそう、あの頑固で変わり者の島田雅彦さんが、「50歳と言えばみんな守りに入るんだけど、映画監督として飛ぶのがすごいよ」ってみんなの前で言ってくれたんでね。出演してもらった。それで映画監督やってみたら、もう俳優の10倍楽しいと思いましたね。
西洋ではアンソニー・ホプキンスとかジーン・ハックマンとか、年配の名優を主役にして撮る映画がかなりあるんですよ。それで緒形さん主演の映画を撮りたいなと思ってました。そしたらコーヒーのコマーシャルの共演者に緒形さんが僕を指名してくださって。「『少女』って映画観たけど、すっげえな。俺はあいつとちゃんと会いたい」って。