2025年、「世界三大コンクール」の一つに数えられるショパン国際ピアノコンクールで桑原志織さんが日本人最高位の4位入賞を果たし、話題を呼びました。凱旋ツアーを前に、コンクールの舞台裏とこれからの夢を聞きます。(構成:山田真理 撮影:木村直軌)
亡き作曲家は神様のよう
ワルシャワへ出発する前、ファンの方から京都にある芸能にまつわる神社のお守りを五つもいただいたんです。
以前から、コンクールでは何か新しい物を一つだけ身につけることが、私流のゲン担ぎ。今回も予選ごとに一つずつ、ファイナルでは二つをバッグに入れて、舞台の袖まで持っていきました。
もともと神社仏閣に興味があって、海外でも教会に行くのが好きなんです。宗教うんぬんというより、今は亡き作曲家たちも私たち演奏家にとっては神様のようなものなので、目に見えない存在を感じ取る――というか、パワーのおすそ分けをいただくという感覚でいます。
とはいえ私は、どんな状況でも極端に緊張することがありません。人前で演奏するのが大好きで、お客様に聴いていただくことが何よりの喜び。普段一人で黙々と練習している時とは受け取る感覚がまったく違います。
ステージ上では心が開放的になり、私が音を届けるのと同時に、作品からもお客様からもいろいろなエネルギーをいただける。お客様と大切なものを共有している、どこか儀式のような不思議な感覚が、私はとても好きなのです。
コンクールも、私にとっては一つの「お客様に聴いていただける場」。ですので、ほどよく気負わず、演奏する楽しみを保ちつつ挑むことができたと思っています。