厚生労働省が2026年に公表した「人口動態統計の速報値(外国人を含む)」によると、2026年1~3月の出生数は前年同期比0.2%増の16万3299人だったそうです。そんな中、東京大学大学院経済学研究科教授であり、ベストセラー『「家族の幸せ」の経済学』の著者でもある山口慎太郎さんは「昔から『早生まれ(1月~3月生まれ)』は学校生活で損をするといわれてきた」と語ります。そこで今回は山口さんの著書『「早生まれ」は損なのか―生まれ月格差の経済学』より一部を抜粋してお届けします。
子どもの成長を6年間追いかけた――埼玉県延べ110万人以上の貴重なデータ
生まれ月と学力の関係を本当に確かめようと思うと、たくさんの子どもの成績を、できるだけ長い期間にわたって集めたデータが必要になります。しかも、特定の学校や一部の子どもだけではなく、できるだけ多くの子どもを含んでいなければなりません。そんな理想的な条件を満たすデータはなかなか存在しませんが、埼玉県が実施している「学力・学習状況調査」は、まさにその条件を備えています。
この調査は、県内の小学校4年生から中学校3年生までの子どもたちを対象に、毎年行われます。対象は公立校に通うほぼすべての児童生徒で、さいたま市だけは独自に調査を行っているため除かれますが、それ以外の地域ではほぼ全員が参加します。病欠などによる欠席はわずか2~3%にとどまり、偏りの少ない調査といえます。
調査内容は大きく二つに分かれます。一つは国語や算数(中学2、3年生は国語、数学に加えて英語も)の学力テスト、もう一つは質問紙によるアンケートです。アンケートでは学習意欲や学習習慣、生活のしかたなどについても尋ねています。つまり「学力」だけでなく、「どのように勉強しているか」「どんな生活を送っているか」といった背景まで知ることができるのです。
私たちの分析に使ったのは2015年から2018年にかけての調査データです。この4年間だけで延べ110万人を超える子どもの記録が含まれています。毎年27万人以上もの子どもたちという規模は、日本国内でも有数です。学校数でいうと708の小学校と356の中学校が含まれています。しかも毎年同じ子どもを追いかける形式になっているため、子どもの成長の過程を継続的に追える点も大きな魅力です。