noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬マニア」第30回は「自家製シロップや、手作りの味噌、手作りのジャムなどの丁寧に暮らしている人に対して感じる謎の敗北感や嫉妬について」です
自家製、手作りに感じる謎の敗北感や嫉妬
今年もこの時期がやってきた。毎年6月は、SNSに梅仕事をする人が大量発生する。竹のザルの上にずらりと並んだたくさんの梅や、大きなガラス瓶に氷砂糖と交互に綺麗に詰められた梅とともに「今年も梅仕事しました」の報告。
それらの画面をスクロールしながら、市販の梅酒を飲んでいる私はこう思う。
丁寧な暮らしをしている人が、羨ましい。
自家製シロップや、手作りの味噌、手作りのジャムなどの写真を載せている人を見ると、丁寧に暮らしている……! と感じつつ、謎の敗北感や嫉妬を覚えてしまう。
文明の力に頼って楽してばかりの暮らしより、季節や気候に合わせ、時間と手間をかけて、自分の手作業で生活を営むほうが、本物の人生で、人間として上であるように思えてしまう。
「丁寧な暮らし」という言葉が流行り出したのはいつからだろうか? 私も子供の頃は、毎年祖母の梅仕事やジャム作りを手伝っていたが、そんな言葉はなかった気がする。あの頃なら、私だって丁寧な暮らしをしていたのに……悔しい!
10年前に家を建てたばかりの頃は、特に「丁寧な暮らし」をしたい欲がすごかった。庭に畑を作り、バジルやトマト、レモンを育てようと思った。フレッシュなカプレーゼや、レモンのジャムを作りたかった。
土を触るのは、意外と気持ちよくて好きだった。しかも、家の生ゴミを処理機で再利用して肥料を作るという意識の高さ!
……だったが、隣の怖いおばさんに「カラスがすごいからやめろ」と怒られ、モチベーションはダダ下がり。レモンの木は一つも実をつけずに枯れた。生ゴミ処理機、10万円もしたのに……。
