自分がいかに生きるか、に妥協しない
最近読んだマンガのなかでもっとも自分を奮い立たせてくれたのがこれ。一見、きれいな絵柄の少女マンガにしか見えないのに、内容はハードでロックだ。
主要な人物が色とりどりである。きょうだい、隣人、同級生。老人も子どももいる。かれらは助けあって生きているし、互いのあいだに愛もあるが、これは恋愛マンガではない。登場人物のすべてが、「自分がいかに生きるか、誰とかかわって生きるか」ということに妥協しない。誰かに好意を伝えたり暮らしをともにしたりするのも、あまい恋愛気分ではない。
主人公のひとりは、美大生だが学生のうちにマンガ家デビューした女子。仕事に必死で卒業はあやしくなるし、かといってマンガも編集者に酷評され、将来が見えない。そんな彼女が同級生女子に進路の悩みをうちあけながら〈ハタチ過ぎたら女の商品価値はどんどん下降していくんだよ!!〉と言ってしまう。同級生はそれを笑い飛ばし、〈私たち初めから商品じゃないし〉〈前提が間違ってるからその話はそれでおいとくとして、私の中の私の価値はどんどんあがってるよ!!〉と言う。そんなクソみたいなこと言ってる世間は、自分たちが変えればいい。〈みんなで一斉に呪いを断ち切ったら〉〈そこにはクソじゃない世界が広がっているよ〉。ストレートな希望の言葉が胸に刺さる。
先行する『赤白つるばみ』上下巻の続編なので、前作を読めば作中の人間関係がよりよくわかる(わたしはこの本を読んでからあわてて前作を入手した)が、単独で読んでも作品のもつ強烈なパワーは伝わる。年齢や性別にかかわらず、誰もが自分を肯定し、自分の価値を疑わずに生きる世界という、見果てぬ夢。たとえ傷つき血まみれになっても、その夢のほうへ走っていく人間たちの物語だ。
著◎楠本まき
集英社 800円