「宝塚時代から、私は客席で笑いが起こることが何よりの快感だったんですよ。」
宝塚の星組トップスターでありながら「稀代のコメディエンヌ」としても愛され、2019年秋に退団した紅ゆずるさん。退団後の舞台が新型コロナウイルスの影響で延期になっていたが、ついに《女優デビュー》する(構成=内山靖子 撮影=初沢亜利)

《女優》として新たな一歩を踏み出して

約18年間、男役を務めた宝塚歌劇団を2019年の秋に卒業し、この春、退団後の初舞台『アンタッチャブル・ビューティー~浪花探偵狂騒曲~』(※3月31日、新型コロナ感染拡大により全公演中止に)で主演を務めることになりました。私が演じるのは、大阪・ミナミにある探偵事務所を突然訪れる謎の女性。生まれ育った大阪のど真ん中にある大阪松竹座で、《女優》として生まれ変わった自分が舞台に立てるご縁をとても嬉しく感じています。

私にとって、このお芝居が《女優》としての初舞台。女性を演じるのは初めての経験ですが、共演するのは、子どもの頃からずっと観てきたお笑いの世界の師匠方。ほかの舞台だったらもっと緊張したかもしれませんが、自分の原点である大阪弁を最大の味方につけて、のびのびと楽しく演じられるような気がします。

もうひとつご縁を感じているのが、退団後の初舞台がコメディだったこと。宝塚時代から、私は客席で笑いが起こることが何よりの快感だったんですよ。

ほかのスターさんたちと違い、私の場合は満足に役もつかなかったところから、いきなりまさかのスター路線に乗ってしまったので、正統派のカッコいいスターさんたちと真っ向から張り合ったら絶対に負けてしまう。そこで、ほかの方にはない自分ならではの個性をアピールしようと考えて、吉本新喜劇を見て育った自分のルーツを武器に、面白い役者を目指すことにしたんです。

トップ就任のお披露目公演『スカーレット・ピンパーネル』でパーシーを演じたときも、「宝塚の舞台で、こんなに笑かしていいの?」というくらい、思い切りコミカルな方向に振りきった。でもそれが大ウケしたので、それ以来、自分の持ち味はコメディで発揮されるんだと考えてきたのです。