四大宗教のシンボルマークとは
世界で信者数の多い宗教は、西からキリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教である。キ・イ・ヒ・仏と並ぶから「紀伊の秘仏」と覚えておくと便利である。
それぞれのシンボルマークとしてよく知られているのは、十字架、新月(の意味で描かれた三日月)、聖音オーム、法輪(ほうりん)だ(図1)。
【キリスト教】
キリストは十字架上に死んで復活したとされる。この神学の上にキリスト教が成り立っているのだから、十字架の形をシンボルとして採用しているのは納得がいく。三、四世紀ごろからの習慣である。
【イスラム教】
イスラム暦は月の満ち欠けを基準とした太陰暦だ。だからたとえば断食月であるラマダーン月の開始の儀礼を行なうとき、新月の確認が儀礼開始の合図となった。かくして11世紀ごろから新月(実際には三日月の形)をモスクの頂上の飾りとして使うようになり、近代になってこれがイスラム教の印として定着した。
【ヒンドゥー教】
紀元前からインドの婆羅門(バラモン。祭司のこと)たちは呪文を唱えるとき「オーン」という聖音を発した。インドの文字体系でAUMと綴られ、オームとも読まれる。ヒンドゥー教では、AUMの三文字のそれぞれが創造神ブラフマー、保持神ヴィシュヌ、破壊神シヴァを象徴するともされる。AUMはインド生まれの諸宗教が共有する呪句だが(仏教の密教も「唵(おん)」という形で取り入れている)、現代ではデーヴァナーガリー文字で書かれたものがヒンドゥー教のマークとして世界的に認知されている。
【仏教】
紀元前五世紀に婆羅門的伝統から離れて独自路線を歩むようになった仏教では、釈迦(しゃか)の教えを世に広めることを象徴する車輪状の図形を、浮彫などで表してきた。今日、仏教のシンボルとして国際的に通用しているのはこの法輪である。
次に十字架と法輪について、少し詳しく説明しよう。