昼の6000円コースから。自家製胡麻豆腐、秋鮭自家製スモーク、大徳寺麩、菊菜の土佐酢がけ、秋茄子田楽、松風、鴨ロース、翡翠銀杏、銀杏芋などを錦秋の趣と共に味わう先付。甘鯛をもち米で挟んで蒸し上げ、いくらを紅葉に見立てた「紅葉蒸し」。野菜は長年付き合いのある錦市場の八百屋「四寅」から。胡麻豆腐や田楽味噌は販売もしている

ほっとする懐かしさと和の風情

創業220年の老舗「近又」の一角に新たに設けられたカウンター席「近また」。店は京都市街で最も賑やかな四条通と、京の台所として知られる錦市場の間にあり、河原町駅からも徒歩圏内。建物は古き良き時代の趣がそのまま息づき、玄関に入って暖簾をくぐるとほっとするような懐かしさと和の風情が漂う。

座敷で出している京料理をミニ懐石風に味わえるのがカウンターの5品のコース。7、8種類の料理を盛り込んだ先付から始まり、常連客に好評の胡麻豆腐や季節の食材で仕立てた料理を楽しめる。

椀物、お造りに続き、4品目は色鮮やかな「甘鯛の紅葉蒸し」が登場。海から遠い京都ではひと塩した魚を昔から用い、中でも上品な旨みのぐじ(甘鯛)は京料理に欠かせないものだ。

「通年お出ししている魚で焼物や揚物にすることもあり、昆布締めにするぐじは京都から近い舞鶴や丹後の海で揚がったもの。先代から付き合いのある担ぎ業者から入れ、数日熟成させています」と話す、山口敏生料理長。

京都の秋冬の焼物といえば味噌漬け。味噌床に漬け込んだ鰆は旨みがあり、白味噌の香りや甘みが食欲を誘う。弾力のあるだし巻きもご飯と好相性。食後のデザート、抹茶で締めくくられる

さらに秋の焼物は旨みと香りの良い鰆の味噌漬けと焼きたてのだし巻きを盛り合わせる。派手さはないが、いずれも丁寧に作られた正統の京料理づくし。抹茶も付き、ほっこりとした気分で締めくくることができる。