繊細で洗練された技術と人間味あふれる作風は唯一無二と評価され、これまでの制作作品700点あまりが完売している洋画家、中島健太さん。大学3年生でデビューし、そこからプロ画家として活躍していますが、美大生時代は教授からも「絵描きは食えない」という言葉をよく聞いていたそうです。中島さんは「絵の売り方を教えず、教授がそれぞれの美意識を押し付けるのを許したままの美大に問題がある」と話しますが――。
美大は「絵をどこで売ればいいか」を教えてくれない
美大に入って衝撃を受けたのは、「プロになる方法」を誰も教えてくれないことでした。プロになろうとすると、むしろ煙たがられる風潮があります。
それには理由があります。
僕がいた造形学部油絵学科という学科に限っていえば、学外で活躍していない人たち(つまり内部の人)が助手に登用され、長い助教授時代を経て教授へとなっていくのです。それが延々と続いていました。
大学から出たことがなく、ずっと内部にいますから、「いまのアート(社会で受け入れられているアート)」とのリンクがありません。自分の絵を外で売って食べてきた「プロ」がいないので、プロになる方法は当然わからない。
美大に入ったとき、僕は絵がうまくなりたいと思っていました。でも、仮にうまくなったとしても、大学では、その絵を「どこに出せばいいか」「どこで売ればいいか」は教えてくれない。僕は美大に入って早々に、そのことに気づきました。