朝、どうしても起きられず、学校に行くことができない。でも夜になると、嘘のように元気に――それを起こすのが起立性調節障害です。思春期の子供がなることが多く、大人たちにはなかなか理解できません。心療内科漢方の専門施設・もりしたクリニックの森下克也医師は「外見上は変わりなく、検査でも異常が見られないために『怠け病』などと呼ばれて傷つき、引きこもりとなる子もいる。治療するには、まず何が起きているのか状況を正しく理解し、何より親が動揺してはいけない」と言います。
どうしても朝、起きるのがつらい
元気に素直にすくすくと育っていたわが子が、小学校の高学年、または中学校に入ったころから、目覚まし時計が鳴っても、朝、起きてこなくなる。
「まったく、朝の忙しいときに」、いらいらしながらお母さんは揺り動かします。でも、目を覚ましません。「朝よ!」と耳元で大声を張り上げ、やっと起きてきても、いつまでもぼーっとした顔です。朝食にさえ、ろくに手をつけようとしません。
「いったい、どうしちゃったのかしら」、不思議に思っているうちに、どんどん事態は深刻化していきます。
ある日、こんな子が、私のクリニックを訪れました。季節は春。高校生になったばかりの女の子、Aさんです。
もともと朝が弱い華奢な子で、性格は真面目。両親ともに公務員の一人っ子です。
教育熱心な両親のもと、頑張って勉強し、第一志望である都内有数の進学校に合格することができました。これから始まる新しい高校生活に、Aさんは胸を躍らせていました。ただ、通学に二時間近くかかることだけが気がかりです。いままでよりも、早起きをしなければなりません。
はじめは起きることができました。学校生活も期待通りでした。テニス部に入り、運動に勉強にと頑張りました。
ところが、一か月、二か月と経つうち、次第にめまい、立ちくらみ、頭痛などの不調を訴えるようになりました。どうしても朝、起きるのがつらいのです。
やがて、遅刻をするようになりました。