放っておくと指の変形につながることも
指がしびれる、親指のつけ根などが痛む、指がこわばって細かい作業がしづらい……。これまでその原因は、手指の老化や使いすぎと言われてきました。
「確かに、加齢や使いすぎで手指の腱や関節などが痛む場合があります。でも、実は更年期に起こる症状であることも多いのです」と話すのは、手の専門医で四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンター長の平瀬雄一先生。
「女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨、関節、靭帯、皮膚、血管などに作用し、全身を守る役割を果たしています。そのためエストロゲンが減少する更年期以降は、骨粗しょう症などになりやすくなるのです」(平瀬先生。以下同)
エストロゲンの分泌が減ると、手指の関節や関節を包む膜、指を動かす腱、腱を包む腱鞘などがダメージを受けやすくなり、しびれやこわばり、炎症による腫れや痛みの原因に。
「実際、手指に関するトラブルは更年期をはじめ、女性ホルモンのバランスが崩れる妊娠中や、エストロゲンが減少する授乳期に多いのです」
ただし、授乳期が終わればホルモンのバランスは元に戻るため、自然治癒するケースがほとんどとか。問題は更年期です。
「エストロゲンは炎症を鎮める作用もあるので、更年期以降はその減少で、症状が改善しにくくなるのです」
ところが、更年期世代の女性が手指のトラブルを訴えても、正しい診断が下せる医師は少なく、「年のせい」と言われて、そのまま諦めてしまうケースも後を絶ちません。
「痛みやしびれを感じたまま使い続けると、7~10年かけて変形してしまいます。そのため、60代になって指の変形を自覚する人が多いのです」
ダメージを受けている手指を無理に使うと関節や腱に負担がかかり、軟骨がすり減ったり関節が曲がったり。指が変形する「へバーデン結節」「ブシャール結節」(次ページ「手の疾患チェックリスト」参照)などの疾患になることもあるのです。変形で神経が圧迫されると、痛みも強くなります。