コロナ禍を経て苦境に立たされる外食産業全体に対し、サイゼリヤ会長・正垣泰彦さんが送った《エール》とは?(写真提供:Photo AC)
いまや300万人が働き、市場規模30兆円を誇る外食産業。その歴史を紐解けば、戦後の規制から農産物輸入規制と自由化の波、そして「ブラック企業」批判など、数々の苦境を乗り越えてようやく今に至っています。「それは金融などのように国から守られた産業と違い、ただ生存競争に明け暮れる、剥き出しの資本主義だ」と語り、長く業界のために奔走してきたのが一般社団法人日本フードサービス協会顧問・加藤一隆さんです。その加藤さん、そしてコロナ禍を経て苦境に立たされる外食産業全体に対し、サイゼリヤ会長・正垣泰彦さんが送った《エール》を今回紹介します。

「おいしい」に科学的な定義はない

食というのはおもしろいもので、びっくりするのですが、「おいしい」というのは誰にもわからないことです。痛みと同じで、おいしいは科学的に定義することはできません。そこが、食べ物屋の世界のむずかしいところでもおもしろいところでもあります。

みんな「おいしい」とか、「俺の作った料理はおいしいだろ」「うちの料理はおいしいから売れるんだ」と言いますが、「おいしい」がどういうことか、誰もその定義や根拠はわかっていないのです。

どの分野でも、産業の基礎には学問があって、科学的な事実をもとに技術は生まれ、技術が産業を育てていきます。

しかし、飲食には科学的な根拠がありません。「おいしい」に科学的な定義があれば、それにもとづいておいしいものは作れるし、売れるものができるはずですが、それがないのです。だからむずかしい。