今はなんともなくても、将来がんになるからと――(写真提供:Photo AC)
「手術をした方がいい」そう医師から言われたら、勿論ほとんどの人が手術を選ぶでしょう。でも、すぐには手術が選べない、手術先が見つからない、そんな人たちもいます。手術以外の方法はないのか他の医師の意見を聞きたい、という場合もあるでしょう。国立がん研究センターの2020年の調査では、治療開始前にセカンドオピニオンについて、担当医から話があった人は34.9%、実際に受けた人は19.5%となっています。

連載『スー女の観戦記』でおなじみのしろぼしマーサさんは、たまたま受けた人間ドックで異常が見つかり、再検査することになったのですが――

4カ月におよぶ検査結果は、生まれつきの異常

救急車が住宅街に止まったままでいる。搬送先の病院が決まらないのだろう。新型コロナウイルス感染患者が重症化したのだろうか?一刻を争う心臓発作か?

その救急車を見て、私は兄の手術先が見つからず、困り果てた日々を思い出した。

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2012年4月、私はN病院の診察室で、消化器内科の若い医師に乱暴な口調で言われた。

「膵胆管合流異常だね。今はなんともなくても、将来は胆嚢がんになるから胆嚢を取っちゃおう。その前に検査入院2週間。それから手術になる」

この診断結果が告げられるまで4カ月がかかっていた。

「なんですか、その病気?」

私の質問に、医師は胆嚢と膵臓の絵を紙に描いた。4カ月間担当しているこの医師は、いつも「素人には分からない」と言い、パソコンに出ている画像を自分の方に向け、私に見せてくれないのだ。

「生まれつきの奇形だ。膵臓の管と胆嚢の管は十二指腸内で合流する。しかし、あなたの場合は手前で合流して、膵液や胆汁が逆流して胆嚢がんになる可能性があるから、胆嚢を予防で取るのだよ」

私はもうすぐ59歳。この年になってから生まれつきの奇形が分かっても困る。

「先生、今の話、私は聞かなかったことにします。これまで胆嚢は痛くないし、黄疸になったこともないし。一緒に暮らしている母は認知症で、兄は統合失調症なのです。入院や手術はできません」

医師はさらりと言った。

「俺たち内臓しか診ていないから」