本物を味わいたくなる

その間にも、私はライブ配信で演劇や音楽を楽しみ、オンラインで句会に遊び、ズームでヨガ教室にも顔をだしてみた。

『才人と俳人――俳句交換句ッ記』(著:堀本裕樹/集英社)

それらは家に居ながらにして十分楽しめる新しい体験で、とても新鮮だった。しかし、それはそれとして。

そろそろ本物を味わいたくないですか。

地球にも生きものにもたいへんな季節をなんとか踏ん張ってきたけれど、今、かつてみんなで同じ空間で感動を分かち合えたことが、懐かしくてしかたがない。

厳しい夏の暑さを過ぎてふと感じる涼しさにほっとするように、そろそろ私たちにも、そんなほっとするリアルな時間が欲しいところだ。はためく寄席の幟は、そんな憧れの象徴として。